読書の「ど」! いちばん長い夜に(乃南アサ 新潮文庫)(7月22日)
いいと思ったら、新書でも、文庫でも、マンガでも、ジャンルは問わず読む「かねとしの 読書の「ど」!」、今回は「いちばん長い夜に」(乃南アサ 新潮文庫)です(感想には個人差があります)。
今巻は「いつか陽の当たる場所で」「すれちがう背中を」に続く物語です。
こん睡強盗の罪で服役し、出所後は家族からも「いなかった」という存在扱いの小森谷芭子(こもりや・はこ)と、夫のドメスティックバイオレンス(DV)から逃れるために、夫を殺害した罪で服役し出所してきた綾香(あやか)の二人が織りなす物語です。
パン職人になるべく修行を重ねる彩香と縫製の技術を生かしてペットショップで犬用の衣装を作って販売することで生計を立てている芭子。
そんな二人の日常は、芭子が衣装を作ることになった家族のところにいる犬がもとで「家族の闇の部分」にかかわることになってしまったり、綾香に好意を寄せる人物との奇妙なかかわりであったりと、今回も多岐にわたります。
ですが今回の話では、芭子が綾香の過去を知るために旅立った東北のある町で遭遇したある出来事…ある出来事とは2011年3月11日に起こった「東日本大震災」なのですが…に絡んで、二人の日常が変わってしまうこと、そして変わってしまった結果、二人の身に起こる変化が主題となります。
本当はこの世には存在しないはずの架空の人物である「綾香」と「芭子」…しかし、読み進める中で、二人の心のありようや、行動が、本当に存在する人物よりも生々しく、読んでいて自分の身近にいる人物のように、生々しく感じられます。
震災後、二人はそれぞれに道を歩むこととなります。
綾香は東北のある町のパン屋で働くこととなり、芭子は震災の夜に出会ったパートナーと共に新しい生活を送ることになります。
この先の二人はどんな生活を送るのか…書かれてはいませんが、読んでみたく思いました。
« 気のみ記のまま雑記帳(7月22日) | トップページ | 気のみ記のまま雑記帳&土曜競馬予想(7月23日) »
コメント